私は主婦です。
どこにでも居る普通の主婦。
その私が抱いた夢、それは動物写真家になること。
それも世界の野生動物の姿、その一瞬をカメラで切り取って、発表していきたい・・・
主婦が目指すにはあまりに壮大で突飛な夢ですよね?
それは遡ること10数年前、主人が発した一言によって始まりました。

『ねえ、今度アフリカに行かない?』
元々、秘境と呼ばれる場所へ行くのが趣味であった我ら夫婦、
主人の何げない一言からケニア旅行へ行くことになりました。
初めて訪れるアフリカの大地は雄大で、何もかもが新鮮な感動で溢れていましたが、
何より心を揺さぶったのは、厳しい自然の中、懸命に生き抜いている野生動物の姿でした。
懸命に生きる動物の姿とはなんと気高く美しいのでしょう!!
『この一瞬の姿を切り取りたい。彼らの美しい姿を写真として残したい』
いつしか私の心にはそのような気持ちが芽生えていました。
が、しかし、残念ながら私には写真に関わる知識や技術がまったくなく、
満足のいく写真は撮れませんでした。
写真技術を学ばなければ!!
一念発起した私は知人から紹介してもらった写真家に撮影方法を習い、
カメラも新調しました。

2003年、再度サバンナの地に降り立った私は必死にシャッターを切っていました。
毎日早朝6時から夜7時まで続くサファリドライブは想像以上に過酷で、
冷暖房のないジープ内の気温は10度から40度近くまでも変化し、
容赦なく私たちの身体を苛みます。
一日中車を走らせても動物たちに出会えない時もしばしば。
サバンナは動物の神聖な世界、人間の領域ではないのです。
帰国の折にはもう体力の限界が。
こうした10日間を経て、納得行く作品を手にするに至りました。
技術的にはまだまだなのは言うまでもありませんが、
自分なりに彼らの一瞬を切り取れた手ごたえを感じました。

作品を発表する機会が少しづつ増えた頃、
観て下さった方々がおっしゃいました。
『アフリカまで行く機会なんて一生ないだろうから、写真で見せてもらえると嬉しい』
そうか!!
アフリカだけではなく、世界の野生動物の姿を写真に収め、
皆さんに観てもらえたら・・・いつしか私はそう思うようになっていました。
それが私の使命のような気がして。

アラスカでは、ヒグマの生息地に分け入り、
ヒグマがサケを獲る一瞬の撮影に成功しました。
子供が生まれ、5歳になった頃からは子供と一緒に行く撮影旅行がスタート。
昨年はアメリカのイエローストーン国立公園へ。
レンタカーで回りながら絶滅危惧種であるバイソンやコヨーテを撮影しました。
今年、スイスではトレッキング中に断崖絶壁に暮らすアイベックス(ヤギの一種)の群れに遭遇、その姿を撮影しました。

有難いことに作品を発表させてもらえる機会は増えてきましたが、
動物写真家と名乗るにはまだまだです。
主婦がそこまでして何になると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、私は目指したいのです。
主婦だから無理、この歳だから無理。
そんな果てしない夢は叶うわけがない・・・そうやって自分に足かせを付けてしまったら何も始まらないと思うのです。
主婦の私が抱いた夢はほんの少しだけ形になりました。
『夢は叶えるためにある』それが私のモットー。夢はまだ途中。
世界の野生動物の姿を皆さんにお届けするということを自分のライフワークとし、
今後も活動していきたいと思います。

柳井 由美